2012年07月18日

RCL並列回路について思い出す

抵抗、コンデンサー、コイルが以下のように交流電源に並列に接続されている場合の電流について、基本的なことを基本的に考え直してみる。

P_RCL.png

抵抗を流れる電流を$I_R$、コンデンサーを流れる電流を$I_C$、コンデンサーを流れる電流を$I_L$とすると、回路全体を流れる電流$I$は、キルヒホッフの法則より、
$$
I = I_R + I_C + I_L
$$
並列接続なので各素子にかかる電圧は等しい。電圧を基準にしてこの和をベクトルで示すと右側の図のようになる。(コンデンサーに流れる電流の位相が電圧に対して $\displaystyle \frac{\pi}{2}$ 進み、コイルに流れる電流の位相が $\displaystyle \frac{\pi}{2}$ 遅れることを用いる。)

ここで各電流の最大値は前回のブログの結果を見れば、
\begin{align*}
I_{R0} &= \frac{V_0}{R}\\
I_{C0} &= C \omega V_0\\
I_{L0} &= \frac{V_0}{L \omega}
\end{align*}
である。するとコンデンサーを流れる電流とコイルに流れる電流のベクトルを足した合成ベクトル(オレンジの矢印)の大きさは
$$
I_{C0} - I_{L0} = C \omega V_0 - \frac{V_0}{L \omega}
$$
このオレンジのベクトルと抵抗を流れる電流のベクトル(赤い矢印)を足したものが、回路を全体を流れる電流をあらわすベクトルである。
このベクトルの大きさ $I_0$ は、三平方の定理を使えば
\begin{align*}
I_0 &= \sqrt{(I_{R0})^2 + (I_{CO} - I_{L0})^2}\\
&= \sqrt{ \left( \frac{V_0}{R} \right)^2 + \left( C \omega V_0 - \frac{V_0}{L \omega} \right)^2}\\
&= V_0 \sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}
\end{align*}
よって、インピーダンスは
$$
Z = \frac{1}{\sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}}
$$
したがって、回路全体を流れる電流は
$$
I = V_0 \sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2} \sin ( \omega t + \varphi )
$$
ただし、この電流の電圧に対する位相のずれ $\varphi$ は以下を満たす角。
$$
\tan \varphi = \frac{C \omega - \frac{1}{L \omega}}{\frac{1}{R}}
$$


同じことを数学的に解く

各素子にかかる電圧は
\begin{align*}
V_0 \sin \omega t &= I_R R\\
V_0 \sin \omega t &= \frac{Q}{C}\\
V_0 \sin \omega t &= L \frac{d I_L}{dt}
\end{align*}
第1式より抵抗を流れる電流は
$$
I_R = \frac{V_0}{R} \sin \omega t
$$
コンデンサーに流れる電流 $I_C$ は、コンデンサーに蓄えられる電荷 $Q$ と
$$
I_C = \frac{dQ}{dt}
$$
の関係にあるから、第2式を用いて
\begin{align*}
I_C &= \frac{d}{dt}(C V_0 \sin \omega t )\\
&= C \omega V_0 \cos \omega t
\end{align*}
第3式より
\begin{align*}
\frac{dI_L}{dt} &= \frac{V_0}{L} \sin \omega t\\
I_L &= \frac{V_0}{L} \int \sin \omega t \, dt\\
&= - \frac{V_0}{L \omega} \cos \omega t
\end{align*}
積分定数は、時間によらず回路に一定の電流が流れ続けることを意味するが、そんなものはないので0とする。
したがって、回路全体を流れる電流は
\begin{align*}
I &= I_R + I_C + I_L\\
&= \frac{V_0}{R} \sin \omega t + C \omega V_0 \cos \omega t - \frac{V_0}{L \omega} \cos \omega t\\
&= V_0 \left\{ \frac{1}{R} \sin \omega t + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right) \cos \omega t \right\}\\
&= V_0 \sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2} \left\{ \frac{\frac{1}{R}}{\sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}} \sin \omega t \right. \\
&+ \left. \frac{C \omega - \frac{1}{L \omega}}{\sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}} \cos \omega t \right\}
\end{align*}
ここで
\begin{align*}
\cos \varphi &= \frac{\frac{1}{R}}{\sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}}\\
\sin \varphi &= \frac{\omega C - \frac{1}{L \omega}}{\sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}}
\end{align*}
とおけば
\begin{align*}
I &= V_0 \sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2} \left( \sin \omega t \cos \varphi + \cos \omega t \sin \varphi \right)\\
&= V_0 \sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2} \sin ( \omega t + \varphi )
\end{align*}
ただし、$\varphi$ は以下を満たす角。
$$
\tan \varphi = \frac{C \omega - \frac{1}{L \omega}}{\frac{1}{R}}
$$
回路全体を流れる電流の最大値は
$$
I_0 = V_0 \sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}
$$
よってインピーダンスは
$$
Z = \frac{1}{\sqrt{ \left( \frac{1}{R} \right)^2 + \left( C \omega - \frac{1}{L \omega} \right)^2}}
$$
となり、図を使った場合と同じ結果となる。
posted by とさかくん at 21:16| Comment(0) | も研

2012年07月15日

交流回路についてちょっと思い出す

昔ならった、交流回路について基本的なことを基本的に考え直してみる。
交流電源($V = V_0 \sin \omega t$)に抵抗(抵抗値$R \,\,\, \mbox{($\Omega$}$))、コンデンサー(電気容量$C \,\,\, (\mbox{F})$)、コイル(自己インダクタンス$L \,\,\, \mbox{(H)}$)がつなげられているそれぞれの場合について。

抵抗の場合

R.png

電位の式を書けば
$$
V_0 \sin \omega t = IR
$$
抵抗を流れる電流は
$$
I = \frac{V_0}{R} \sin \omega t
$$
となり、電圧と電流の位相のずれはなく、ベクトルで図示すれば、右の図のようになる。
抵抗を流れる電流の最大値$I_{R0}$は
$$
I_{R0} = \frac{V_0}{R}
$$

コンデンサーの場合

C.png

コンデンサーにかかる電圧と蓄えられる電荷との間には$Q=CV$の関係があるから、電位の式を書けば
$$
V_0 \sin \omega t = \frac{Q}{C}
$$
ここで、コンデンサーに流れ込む電流と蓄えられている電荷の関係は
$$
I = \frac{dQ}{dt}
$$
であらわされる。したがってコンデンサーに流れる電流は
\begin{align*}
I &= \frac{d}{dt} (C V_0 \sin \omega t)\\
&= C \omega V_0 \cos \omega t\\
&= C \omega V_0 \sin \left( \omega t + \frac{\pi}{2} \right)
\end{align*}
となり、電流の位相は、電圧の位相よりも$\displaystyle \frac{\pi}{2}$だけ進んでいる。ベクトルで図示すれば、右の図のようになる。
コンデンサーに流れこむ電流の最大値$I_{C0}$は
$$
I_{C0} = C \omega V_0
$$
となる。オームの法則$V = RI$と同様の概念を適用すれば直流回路の抵抗に対応するものとしてインピーダンスを定義できる。コンデンサーのインピーダンス$Z_C$は
$$
Z_C = \frac{1}{C \omega} \,\,\, \mbox{($\Omega$)}
$$

コイルの場合

L.png

このコイルにおける自己誘導起電力は
$$
V_{emf} = - L \frac{dI}{dt}
$$
であるから、電位の式を書けば
$$
V_0 \sin \omega t = L \frac{dI}{dt}
$$
となるので、
\begin{align*}
\frac{dI}{dt} &= \frac{1}{L} V_0 \sin \omega t\\
I &= \int \frac{1}{L} V_0 \sin \omega t dt\\
&= - \frac{1}{L \omega} V_0 \cos \omega t\\
&= \frac{1}{L \omega} V_0 \sin \left( \omega t - \frac{\pi}{2} \right)
\end{align*}
となる。(積分定数は、時間によらず一定の電流が回路に流れ続けることを意味するがそんなことはないので、0とする。)
したがって、コイルに流れる電流の位相は、電圧の位相よりも$\displaystyle \frac{\pi}{2}$遅れている。ベクトルで図示すれば右側の図のようになる。
コイルに流れる電流の最大値$I_{L0}$は
$$
I_{L0} = \frac{1}{L \omega} V_0
$$
コイルのインピーダンス$Z_L$は
$$
Z_L = L \omega \,\,\, \mbox{($\Omega$)}
$$
となる。

これらの回路素子(抵抗、コンデンサー、コイル)が直列あるいは並列につながれている場合、同じように数学的に解くこともできるが、上記のベクトル図を組み合わせて使うことで、電流や電圧の最大値、位相の差などの情報を得ることができる。

コンデンサーやコイルの流れる電流の位相がずれることは高校で習うのですが、高校の物理では基本的には微分積分を使わないはず、、、、。この位相のずれをどうやって微積無しで習ったのかは、もう思い出せない、、、、。
posted by とさかくん at 17:20| Comment(0) | も研

2012年06月21日

気体の法則について思い出す

台風がこんな季節にやってくるなんて、ということで気体の法則について基本的なことを基本的に考えなおしてみた。

常温常圧での一定質量の気体に対し、圧力を$P$、体積を$V$とすると以下のことが気体の種類によらず成り立っていることが、実験的に知られている。

ボイルの法則  
温度一定の時 : $PV = \mbox{Const.}$

シャルルの法則 
圧力一定の時 : 気体の体積の膨張係数$\alpha$は、$\frac{1}{273}$

この時$0^\circ$C での体積を$V_0$、$\theta^\circ$Cでの体積を$V$とすると
$$
V = V_0 (1 + \alpha \theta) = V_0 \left( 1 + \frac{1}{273} \theta \right)
$$
と書ける。したがって、シャルルの法則に従えば、$\theta = -273^\circ$Cで体積は $V = 0$となる(実際は、実在する気体ではその前に液化してしまう)。そこで原点を$-273$にずらした温度$T$(絶対温度 単位はK)を定義する
$$
T = \theta + 273
$$
すると
\begin{align*}
V &= \alpha V_0 T\\
\frac{V}{T} &= \mbox{Const.}
\end{align*}

これらの法則は、高圧になったり低温になるなど、分子間力が無視できなくなる状態では成り立たない。そこで、分子間力を無視できる仮想的な気体を考えれば上記のことは完全に成り立つ。このような気体を「理想気体」という。

理想気体の状態方程式
圧力 $P$、体積$V$、温度$T$ の $n$ mol の理想気体を考える。
この気体を温度を一定に保ちながら、圧力$P_0 = 1$atm($1.013 \times 10^5$ N/m${}^2$)、体積$V_1$ にする。
ボイルの法則より
$$
PV = P_0 V_1
$$
次に、圧力$P_0$を一定に保ちながら、温度を$T_0 = 273$K、体積$V_0$ にする。
シャルルの法則より
$$
\frac{V_1}{T} = \frac{V_0}{T_0}
$$
これら2式から
\begin{align*}
PV &= P_0 \times \frac{T}{T_0} \times V_0 \\
\frac{PV}{T} &= \frac{P_0 \times V_0}{T_0}
\end{align*}
標準状態($273$K、$1$atm)では、$1$ mol の理想気体の体積は $22.4 l$ であるから
$$
V_0 = n \times 22.4 \times 10^{-3} \mbox{m}^3
$$
すると
$$
\frac{PV}{T} = \frac{1.013 \times 10^5 \times n \times 22.4 \times 10^{-3}}{273} = 8.31 \times n
$$
ここで、$R = 8.31$ J/K$\cdot$mol を気体定数という。
したがって
$$
PV = n RT
$$
これを理想気体の状態方程式という。
posted by とさかくん at 17:02| Comment(0) | も研