2012年10月06日

2つの気柱の共鳴について考えた

振動数を自由に変えられる音源の両脇に両端が開いた2つの管A、Bがある。
長さはそれぞれ $4L$、$3L$ である。

tube2.png


音速を $c$ として、音源の振動数を $0$ から少しずつ上げていった時、2つの管A、Bが初めて同時に共鳴する振動数を求めよう。(ただし、開口端補正を無視し、各管どうしの干渉は考えない。)

両端が開いた管にできる定常波の場合、基本振動の波形は以下の図のようになり、半波長が管の長さになっている。

kityu.png


そこで、管A、Bにできる定常波の基本振動数を $f_A$、$f_B$ 波長を $\lambda_A$、$\lambda_B$ とすると、
管Aについて、
\begin{eqnarray*}
\frac{\lambda_A}{2} &=& 4L\\
\lambda_A &=& 8L
\end{eqnarray*}
したがって、基本振動数 $f_A$ は
\begin{eqnarray*}
f_A &=& \frac{c}{\lambda_A}\\
f_A &=& \frac{c}{8L}
\end{eqnarray*}
管Bについて、同様に計算すると
\begin{eqnarray*}
\frac{\lambda_B}{2} &=& 3L\\
\lambda_B &=& 6L\\
f_B &=& \frac{c}{\lambda_B}\\
f_B &=& \frac{c}{6L}
\end{eqnarray*}
分数のままだと見通しが悪いので比を考えると
$$
f_A : f_B = \frac{c}{8L} : \frac{c}{6L} = \frac{1}{8} : \frac{1}{6} = \frac{1}{4} : \frac{1}{3} = 3 : 4
$$
そこで、
$$
f_A = 3a,\,\,\, f_B = 4a
$$
とすると
$$
a = \frac{c}{24L}
$$
音源の振動数を上げていった時、各管中の気柱が共鳴する振動数を表にすると

    基本振動  2倍振動  3倍振動  4倍振動
----------------------------------------------------------------------------------
管A    $3a$    $6a$     $9a$    $12a$
----------------------------------------------------------------------------------
管B    $4a$    $8a$     $12a$    $16a$
----------------------------------------------------------------------------------

したがって、管A、Bが同時に共鳴するのは、音源の振動数が $12a$ の時、
つまりこの時の音源の振動数 $f$ は
$$
f = 12a = 12 \times \frac{c}{24L} = \frac{c}{2L}
$$
となる。

この例では管を2本としたため簡単だが、管の数が増え(例えば4本)、気柱が共鳴する順番を調べたりする場合には、今回のように比を考える方法は便利(分数のままやると頭が変になる)。

音源から離れている端が閉じている管についても同様に考えることができるが、その場合は基本振動数の奇数倍のみが許されることを忘れないこと。

posted by とさかくん at 22:44| Comment(0) | も研

2012年09月30日

カルノーの定理をざっくり考えなおした

熱力学第一法則は、気体の吸収する熱量を $Q$、内部エネルギーの変化を $\Delta U$、外にする仕事を $W$ とすると
$$
Q = \Delta U + W
$$
と表される。

熱力学第二法則には、いくつかの言い回しがあるが、ここでは以下のトムソンの原理を採用する。

トムソンの原理
一つの熱源から熱を受け取り、そのすべてを熱に変えるだけで、他に何の変化も残さないような過程は不可能である。

これらを基に以下のカルノーの定理をざっくり考えなおす。

カルノーの定理
一様な温度を持つ2つの熱源の間で働く可逆機関の効率は、可逆機関(作業物質)の種類によらず、熱源の温度のみで決定され、同じ2つの熱源の間で働く不可逆機関(一般の熱機関)の熱効率は可逆機関の効率以下である。

まずは、下の図のような理想気体を用いたカルノーサイクルを考える。

carnot_cycle_graph.png


このサイクルにおいて加熱されているは $D \rightarrow A$ のみ。
$D \rightarrow A$ は、等温過程だから内部エネルギーの変化はないので、熱力学第一法則は
$$
Q_{DA} = W_{DA}
$$
よって全加熱量 $Q_{+}$ は、
$$
Q_{+} = Q_{DA} = W_{DA} = \int_{V_D}^{V_A} p dV
$$
理想気体の状態方程式
$$
pV = nRT
$$
を使って
\begin{eqnarray*}
Q_{+} &=& nRT_{+} \int_{V_D}^{V_A} \frac{1}{V} dV\\
&=& nRT_{+} \left[ \log V\right]_{V_D}^{V_A}\\
&=& nRT_{+} \log \frac{V_A}{V_D}
\end{eqnarray*}
放熱されているのは、$B \rightarrow C$ の等温過程のみなので、全放熱量は同様に計算すれば、
\begin{eqnarray*}
Q_{-} &=& -Q_{BC} = -W_{BC}\\
&=& - \int_{V_B}^{V_C} p dV\\
&=& nRT_{-} \log \frac{V_B}{V_C}
\end{eqnarray*}
また、$A \rightarrow B$、$C \rightarrow D$ は、断熱過程であるからポアソンの公式が成り立つ
\begin{eqnarray*}
T_{+}V_A^{\gamma - 1} &=& T_{-}V_B^{\gamma - 1}\\
T_{+}V_D^{\gamma - 1} &=& T_{-}V_C^{\gamma - 1}
\end{eqnarray*}
よって辺々割れば
\begin{eqnarray*}
\left( \frac{V_A}{V_D} \right)^{\gamma - 1} &=& \left( \frac{V_B}{V_C} \right)^{\gamma - 1}\\
\frac{V_A}{V_D} &=& \frac{V_B}{V_C}
\end{eqnarray*}
よって
$$
Q_{-} = nRT_{-} \log \frac{V_A}{V_D}
$$
カルノーサイクルの熱効率は
\begin{eqnarray*}
\eta &=& \frac{Q_+ - Q_-}{Q_+} = 1 - \frac{Q_-}{Q_+}\\
&=& 1 - \frac{nRT_{-} \log \frac{V_A}{V_D}}{nRT_{+} \log \frac{V_A}{V_D}}\\
&=& 1 - \frac{T_-}{T_+}
\end{eqnarray*}
したがって、カルノーサイクルの熱効率は、熱源の温度のみで決まる。

次に、高温熱源 $T_+$ と低音熱源 $T_-$ の間で働く一般の熱機関と、可逆機関の例としてカルノーサイクルを考える。
まずは、一般の熱機関が熱源 $T_+$ から熱量 $q'_+$ を吸収し、熱源 $T_-$ に熱量 $q'_-$ を放出し、外に $w' = q'_+ - q'_-$ の仕事をしたとする(下図参照)。

g_cycle.png


この時、この機関の熱効率 $\eta'$ は、
$$
\eta' = 1 - \frac{q'_-}{q'_+}
$$
となる。

同じ熱源 $T_+$、$T_-$ の間で働くカルノーサイクル(可逆機関)を考える。
カルノーサイクルをうまく調節して熱源 $T_+$ から吸収する熱量が上記の一般熱源が吸収する熱量 $q'_+$ と同じになるようにする。熱源 $T_-$ に放出する熱量を $q_-$ とすると、外にする仕事は $w = q'_+ - q_-$ となる(下図参照)。

carnot_cycle.png


この時、この機関の熱効率 $\eta$ は、
$$
\eta = 1 - \frac{q_-}{q'_+}
$$
ここで、カルノーサイクルは可逆機関であるから、逆運転することが可能である。この場合、熱源 $T_-$ から熱量 $q_-$を吸収し、熱源 $T_+$ へ熱量 $q_+$ を放出し、外から$w = q_+ - q_-$の仕事をされることになる(下図参照)。

i_carnot_cycle.png


この逆運転しているカルノーサイクルと一般の熱機関を結合した熱機関を作ると以下の図のようになる。

c_cycles.png


この結合した熱機関が吸収した正味の総熱量 $Q_{in}$ は、
$$
Q_{in} = q'_+ - q'_- - q'_+ + q_- = q_- - q'_-
$$
となり、結合した熱機関は熱源 $T_-$ とのみ熱の移動があることになる。
また、この結合した熱機関が外にする仕事の総量 $W_{out}$ は、
$$
W_{out} = w' - w = q'_+ - q'_- - (q'_+ - q_-) = q_- - q'_- = Q_{in}
$$
ここで、
$$
W_{out} = q_- - q'_- > 0
$$
だとすれば
$$
Q_{in} > 0
$$
となり、一つの熱源 $T_-$ から熱を受け取り、その全てを外にする仕事に変換できることになる。これは熱力学第二法則(トムソンの原理)に反することになるからこれは許されない。
したがって、
$$
W_{out} = Q_{in} = q_- - q'_- \leq 0
$$
となる。
つまり
\begin{eqnarray*}
q'_- &\geq& q_-\\
\frac{q'_-}{q'_+} &\geq& \frac{q_-}{q'_+}\\
1 - \frac{q'_-}{q'_+} &\leq& 1 - \frac{q_-}{q'_+}\\
\eta' &\leq& \eta
\end{eqnarray*}
となり、一般の熱機関の熱効率はカルノーサイクルの熱効率以下となる。

次に一般の熱機関として任意の可逆機関を採用すると、2つの熱機関はどちらも可逆機関であるから、結合した機関を逆運転することができる。
こうすると、任意の可逆機関とカルノーサイクルの立場が入れ替わるので、
$$
\eta' \geq \eta
$$
つまり $\eta' \leq \eta$ かつ $\eta' \geq \eta$ であるから
$$
\eta' = \eta
$$
よって、任意の可逆機関の熱効率とカルノーサイクルの熱効率は等しい。
したがって、一般の熱機関は、可逆機関の熱効率以下である。

以上わかったことは
1. カルノーサイクルの熱効率は2つの熱源の温度のみで決まる。
2. 2つの熱源の間で働く任意の可逆機関の熱効率は、カルノーサイクルの熱効率と等しい。
3. 2つの熱源の間で働く一般の熱機関の熱効率は、同じ2つの熱源の間で働くカルノーサイクルの熱効率以下である。

まとめると
「2つの熱源の間で働く場合、可逆機関の熱効率は2つの熱源の温度のみで決まり、一般の熱機関の熱効率は任意の可逆機関の熱効率以下である。」となり、カルノーの定理が(ざっくり)証明される。
posted by とさかくん at 12:32| Comment(0) | も研

2012年09月21日

音叉の左右に進む波の式

原点 $O$ から距離 $L$ の地点に音叉 S があり、波長 $\lambda$、振動数 $\nu$ の音波を左右に出している。

onsa.png

この際、左右に出ている音波は、圧力や密度の上では同一の初期位相で出しているが、変位の上では $\pi$ だけ異なった初期位相で出している。音波は縦波であるから、媒質は $x$ 方向に振動する。
今、Sから左に進む波について、位置 $x$、時刻$t$における媒質の変位 $y_{L}(x, t)$ が、振幅を $A$、波数 $\displaystyle k = \frac{2 \pi}{\lambda}$、角振動数 $\omega = 2 \pi \nu$ として
$$
y_{L}(x, t) = A \sin(\omega t + k x)
$$
で与えられているとする。

この時、音叉Sの右に進む波の位置 $x$ における媒質の変位 $y_{R}(x, t)$ は、次のようにして求められる。
音叉のある $x = L$ での振動は、
$$
y_{L}(L, t) = A \sin(\omega t + k L)
$$
右に進む波は位相が $\pi$ ずれるから
$$
y_{R}(L, t) = A \sin(\omega t + k L + \pi)
$$
音波の速さを $v$ とすると、音叉の右側に $x - L$ だけ波が伝わるのに $\displaystyle \frac{x - L}{v}$ [s]かかるから
$$
y_{R}(x, t) = A \sin \left\{ \omega \left(t - \frac{x - L}{v} \right) + k L + \pi \right\}
$$
$\displaystyle \frac{\omega}{v} = k$ だから
$$
y_{R}(x, t) = A \sin \{ \omega t - k (x - L) + k L + \pi \}
$$
となる。
posted by とさかくん at 23:15| Comment(0) | も研